紅茶はイギリスでアフタヌーンティーの習慣が定着したことを契機に、ヨーロッパから世界へ広まっていった飲み物です。
ただし、世界で流通している紅茶の大半はイギリスではなく、アジアやアフリカなどで生産されています。
そんな紅茶の主要産出国のひとつがスリランカです。
スリランカの紅茶は日本でも非常に多く流通しており、たとえばキリン「午後の紅茶」にもスリランカの紅茶が使われています。
ただ、この記事をご覧になっている方のなかには、南アジアの小さな島国の紅茶がなぜこんなにも有名なのか、いまいちピンとこない方もいるのではないでしょうか。
そこで、この記事では世界中で愛されるスリランカ紅茶の特徴や、スリランカ紅茶ならではの魅力を紹介・解説していきます。
スリランカの紅茶が気になっている方は、ぜひ最後までお読みください。
スリランカの紅茶が有名なのはなぜ?セイロンティーが世界中で愛される3つの理由
スリランカでの紅茶栽培は1867年、「スリランカ紅茶の父」と称されるスコットランド人・ジェームズ=テイラーの手により始まったとされています。
ちなみにスリランカの紅茶がセイロンティーとも言われるのは、当時のスリランカがイギリス領セイロンだったためです。
その後、紅茶ブランド「リプトン」の創業者・トーマス=リプトンの尽力による技術革新もあり、19世紀末には世界一の紅茶輸出国となりました。
そんなスリランカの紅茶が、今もなお世界中で親しまれている3つの理由を紹介します。
①世界トップレベルの茶葉生産量・紅茶輸出量を誇る
スリランカは世界でも有数の茶葉生産国です。
2021年のデータによると、スリランカの茶葉生産量は約34万230トンで世界第4位。
北海道よりも小さな国土で、日本(約8万4,800トン)の4倍以上の茶葉が生産されています。
また、紅茶の輸出量は常に世界1位を争う水準で、日本における輸入量・流通量もスリランカの紅茶が最多です。
なお、量だけではなく世界三大銘茶(世界三大紅茶)に数えられるウヴァを筆頭に、品質・味わいの面でも高く評価されています。
茶葉生産量1位:中国(200万トン以上/2021年)
ちなみに、茶葉生産量の世界1位は中国です。
中国には烏龍茶や普洱(プーアール)茶など様々なお茶があります。
ただ、実は紅茶の生産も盛んにおこなわれており、その生産量は全体の約60%を占める緑茶に次ぐ2番目です。
特に世界三大銘茶(世界三大紅茶)のひとつであるキーマン(キームン)は、高級・高品質な紅茶として広く知られています。
茶葉生産量2位:インド(約120万トン/2021年)
茶葉生産量の世界2位はインドです。
人口14億人以上のインドでは喫茶習慣が生活の一部として浸透していることもあり、生産された茶葉の約50%は国内で消費されています。
世界三大銘茶(世界三大紅茶)のひとつであるダージリンのほか、日本でおなじみのアッサムもインドの紅茶です。
なお、2021年時点での茶葉生産量・世界3位はケニアとなっています。
データ出典:WorldAtlas「The World’s Top Tea-Producing Countries」
②紅茶栽培に適した気候・地形により通年で茶葉を収穫できる
紅茶の栽培に適した土地の条件は、主に次の3つです。
- 高地
- 温暖な気候
- 程よい湿度
南部の山岳地帯を中心に茶園が点在し、熱帯気候で1年を通して温暖かつ適度な雨量があるスリランカは、この条件を高い水準で満たしています。
そのため、通年で安定して茶葉の栽培・収穫が可能です。この恵まれた環境が世界トップレベルの生産量・輸出量の源となっています。
③産地ごとに異なる個性の紅茶を楽しめる
スリランカの紅茶は、茶園の標高により次の3種類に分類されます。
- ハイグロウン・ティー
- 標高:4,000フィート(約1,200m)以上
- 代表的な産地:ウヴァ、ディンブラ、ヌワラエリヤ、ウダ・プッセッラーワ
- ミディアムグロウン・ティー
- 標高:2,000〜4,000フィート(約600〜約1,200m)
- 代表的な産地:キャンディ
- ローグロウン・ティー
- 標高:0〜2,000フィート(0〜約600m)
- 代表的な産地:ルフナ、サバラガムワ
基本的には標高が高いほど水色が明るく上品な味わいの紅茶になり、標高が低いほど水色が濃く力強い味わいの紅茶になります。
そのうえで、産地ごとに異なる個性を楽しめるのがスリランカ紅茶の特長です。
ハイグロウン・ティーには旬がある
なお、スリランカの山岳地帯は年2回のモンスーンにより、それぞれ異なるエリアに雨季と乾季が訪れます。
- 貿易風(12〜3月)
- 雨季:山岳地帯の東側
- 乾季:山岳地帯の西側(ディンブラ、ヌワラエリヤ)
- 偏西風(6〜9月)
- 雨季:山岳地帯の西側
- 乾季:山岳地帯の東側(ウヴァ)
乾季は紅茶の旬(クオリティ・シーズン)と言われ、12〜3月のディンブラとヌワラエリヤ、6〜9月のウヴァは茶葉の品質が向上します。
クオリティ・シーズンの茶葉はその品質の高さに比例して市場価格も高騰しますが、その価格に見合った味・香りを楽しむことが可能です。
なお、雨季・乾季による品質の変化があるのはハイグロウンティーのみで、標高4,000フィート未満で栽培されている紅茶にはほとんど影響しません。
そのため、キャンディやルフナでは通年で安定した量・味わいの紅茶が収穫されています。
スリランカ紅茶の七大産地って何?ウヴァやキャンディなど産地ごとに異なる特徴とおすすめの飲み方を紹介
前章ではスリランカ紅茶が世界規模で愛され続けている3つの理由を紹介しましたが、その中の「産地ごとに異なる個性の紅茶を楽しめる」をもう少し深掘りしていきます。
スリランカの紅茶にはもともと、世界三大銘茶(世界三大紅茶)のひとつに数えられるウヴァを始めとする五大産地がありました。
ただ、現在は五大産地の一部が細分化され、次の7つに分けられています。
- ウヴァ(ハイグロウン)
- ディンブラ(ハイグロウン)
- ヌワラエリヤ(ハイグロウン)
- キャンディ(ミディアムグロウン)
- ルフナ(ローグロウン)
- ウダ・プッセッラーワ(ハイグロウン)
- サバラガムワ(ローグロウン)
これがスリランカ政府より認定を受けている紅茶の七大産地です。
それぞれ、どんな特徴の茶葉が栽培されているのかを紹介します。
ウヴァ
山岳地帯の東側に広がるウヴァは、紅茶ブランド「リプトン」の創業者・トーマス=リプトンにより開拓されたスリランカ紅茶を代表するハイグロウン・ティーの名産地です。
ミントのような清涼感のある香りとバランスのとれた味わいにより、世界三大銘茶(世界三大紅茶)のひとつとして広く認知されています。
そのクオリティの高さをダイレクトに味わえる、ストレートティーやアイスティーで楽しむのがおすすめです。
ディンブラ
ディンブラは山岳地帯の西側に広がるハイグロウン・ティーの産地であり、スリランカ紅茶のうち日本でもっとも多く流通しているのはディンブラの茶葉です。
香りはバラのように華やかで、濃厚な風味・コクとともに軽やかな渋味が広がります。
ハイグロウン・ティーのなかではもっとも力強い紅茶のため、ストレートティーやアイスティーだけでなくミルクティーで楽しむのもおすすめです。
ヌワラエリヤ
ウヴァとディンブラに挟まれた高地にあるヌワラエリヤは七大産地のなかでもっとも狭く、相対的に茶葉の生産量も少ないエリアです。
その稀少性とともに、緑茶を思わせる爽やかな渋味や清々しい香り、クリアな水色は“セイロンティーのシャンパン”と称されるほど高く評価されています。
ストレートティーで、茶葉のもつ高貴な香り・味を楽しむのがおすすめです。
キャンディ
山岳地帯の北寄りに広がるキャンディはミディアムグロウン・ティーの代名詞であり、セイロンティー発祥の地とも言われています。
芳醇な香りとまろやかな味わいがあるオーソドックスな紅茶のため、ブレンドティーのベースとして使用されることも非常に多い茶葉です。
ストレートティーはもちろん、ミルクティーやレモンティーなどでも安定感のある旨み・香りを発揮します。
ルフナ
ルフナは、山岳地帯の南部に広がるローグロウン・ティーの産地です。
日本ではあまり馴染みのない茶葉ですが、特に中東ではチャイのベースとして頻繁に使用されるなど絶大な人気を誇ります。
特徴は、甘みのある香りとコクのある味わい。
ミルクティーが好きな方には特におすすめしたい、力強さのある紅茶です。
ウダ・プッセッラーワ
ウダ・プッセッラーワは、ウヴァのヌワラエリヤ側の独立により新たに認定を受けたハイグロウン・ティーの産茶です。
貿易風の時期も偏西風の時期も乾季となるエリアのため、他のハイグロウン・ティーよりもクオリティ・シーズンが長くなります。
華やかな香りとバランスのとれた味わいがあり、ストレートティーだけでなくミルクティーにしても香り高い1杯を楽しむことが可能です。
サバラガムワ
サバラガムワは、ルフナ北部の独立により新たに認定を受けたローグロウン・ティーの産地です。
重厚でコクのある味わいと蜂蜜のような甘い香りが特徴のため、その力強さを生かしてミルクティーで楽しむことをおすすめします。
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